製造工程
江戸切子は大きく4種類に分けた以下の製造工程を経て、職人たちの手で一つずつ製造されております。
1.割り出し・墨付け
江戸切子の製作では、削っていく図案の下絵は描かずに、「割り出し」または「墨付け」といわれる、図案を入れる場所に目印を入れる作業を行います。
ガラスの表面に施す図案の配分を決めた後、ベンガラをつけた竹棒や筆で印をつけるものです。
つぎに、図柄の基準となる線を砥石で細かく浅く削ることで入れていきます。
このわずかな目印や線を頼りに、職人の熟練の技によって、江戸切子の繊細な模様が削られていきます。
2.荒摺り・三番掛け
「荒摺り」では、模様の基本となる仕上がりの4分の3程度の幅や深さまで削ります。
ガラスの表面を削る工程では、金盤(かなばん)という高速で回転する鉄製の円盤の表面に、砂をペースト状にしたものを載せて削っていきます。
このときに使う砂は金剛砂(こんごうしゃ)と言われ、「荒摺り」に使う砂は粒子がもっとも荒い「一番砂」です。
「親骨」という模様の境目となるくっきりとした線や大まかな模様は「荒摺り」の段階で作られ、2~3回に分けて行う場合もあります。
下絵がないため、線の太さや深さ、バランスは職人の経験によって削っていきます。
3.石掛け
「石掛け」とは、「荒摺り」と「三番掛け」で施された模様を整え、細工を施した表面が滑らかになるように研磨していく工程です。
砥石製の円盤を使い、金盤では作りだせない細かな模様も削り出していきます。
円盤に用いられる砥石には、天然のものと人工のものがあります。「石掛け」は図柄を作りだす最終工程でもありますので、仕上がりを大きく左右します。
「石掛け」は削る最後の工程であり、砂目を残さないように慎重で丁寧な作業が求められます。
4.磨き
「磨き」は、石掛けによって不透明になっている表面を磨くことで、ガラスを透明な状態に戻して光沢を出し、江戸切子の魅力を引き出す最終工程です。
「磨き」はソーダガラスの場合に行なわれる作業で、高級なクリスタルガラスの場合には、フッ酸などの薬品処理されることもあります。
「磨き」は、桐や柳の木盤、あるいは毛ブラシ盤やベルト盤など、作品に合わせた磨き用の円盤を使い、水と磨き粉をつけて磨きあげていきます。
細かい部分などを布やブラシによって磨くケースもみられます。最後に、ハブ盤と言われる布の円盤による「バフ掛け」と言われる仕上げ磨きをしてツヤを出すと、「磨き」の工程が終わり、江戸切子は完成です。